僕は中肉中背、ごく普通の体型だ。 つい先日受けた人間ドックでも何も異常はなく、きわめて健康だ。 しかし、実は今週に入ってから腹部に違和感を感じている。 ただ、実際にお腹を見ても何の変化も見られないから、勘違いの可能性は高い。 そう自分に言い聞…
僕はムキムキの体に憧れている。なぜなら、僕はガリガリだからだ。 いくら食べても太らない。 母さんは、羨ましいって言うけれど、僕はちっとも嬉しくない。 今はマッチョが流行っているから、テレビなんかではよくムキムキの人を目にするけれど、まだ僕は実…
夏の暑い日、僕はサイダーを飲もうとして、ペットボトルのふたを開けた。 すると、飲み口からサイダーがシュワシュワと吹き出した。 僕はあわててペットボトルに口をつけると、あふれ出したサイダーをゴクゴクと飲んだ。 ゴクゴク、ゴクゴク、僕は飲み続けた…
この国のどこかに、メロンクリームソーダの滝があるという言い伝えがある。 多くの人がその滝を探すことにチャレンジしたけれど、いまだに誰も成功していない。 だから、最近ではそんな言い伝え自体が忘れ去られようとしていた。 だけど僕は諦めていない。探…
姫様はスカートが大嫌い。 スカートなんかをはいていたら、男の子とかけっこした時負けてしまうからだ。 そんなわけで、姫様はいつもと釣りズボンをはいている。 母君は、「女の子がズボンなんてはしたない」と言うけれど、父君は「元気でよろしい」と言って…
僕はクッキー星のクッキー星人。 僕たちは他の星に行っては空からクッキーをばらまいているんだ。 僕らの目的はその星の人たちを僕らのクッキーのとりこにしてしまうことだ。 そうすれば、僕たちはお金がたっぷり儲かるし、他の星の人たちは僕らのおいしいク…
僕は気づくと隙間に入っている。 とにかく狭い隙間が落ち着くんだ。 朝目覚めると、ベッドと壁の隙間にしばらくの間入る。 とても落ち着くけどそろそろ起きないと学校に遅刻してしまう。 洗面所で顔を洗った後、洗濯機と壁の間にしゃがみこんだ。 洗濯機の冷…
王様は大のシロップ好き。 コーヒーに入れたり、ソーダに入れて一日に何度もシロップを楽しみます。 その香りと甘さのとりこなのです。 お城のコック長であるピエールさんは毎日シロップを使ったメニューを作るのに大忙し。 だけど、王様はもっとおいしいレ…
今は冬。 降り積もった雪は3メートルにもなって、外に出るのも一苦労。 除雪車が作った道を犬のスワンと一緒に散歩するのが私の日課。 おばあちゃんが買ってくれた薄紫のふわふわコート。 大きなお花の刺繍がしてあるのも素敵だし、裾がスカートみたいに広…
僕はある日の放課後、友達のケンジくんと落とし穴を掘ることにした。 母さんにバレるときっとやめなさいと言われるから、僕は納屋からこっそりおじいちゃんの大きなスコップを持ち出したんだ。 ケンジくんのうちには大きなスコップがないから、僕は重いスコ…
「ねえ、ちょっと君」 「え、私ですか?」 会社から帰る途中、突然男性に声を掛けられ、私は驚いて振り向いた。 「やっと見つけたよ。いったいどういうつもり?」唐突に言われ、私は混乱した。 どう考えても、この男性とは初対面だ。 「あの、誰かと間違えて…
学校帰りに毎日通る道が、ある日突然分かれ道になった。 今朝までは確かに一本道だったのに。 僕はどっちの道を選べばいいのか分からない。 片方は道端に小さな花が咲いていてとても素敵な雰囲気だ。 もう片方は草ボーボーであまりいい気分にはなりそうもな…
僕は、その人が今なにを食べたいのか分かってしまう。 どうしてなのかは分からない。気づいたらそうなっていたんだ。 小さい頃、夕ご飯がカレーの日があった。 父さんは唐揚げが食べたいと思っているのに、なぜか「ちょうどカレーが食べたかったんだ」と言っ…
女王様は宝石が大好き。 世界中から素敵な宝石を探しては集めている。 だから、お城には毎日たくさんの宝石商人がやってくる。 今日も夜明け前から門の前には長い列ができている。 商人たちはお城にいる鑑定人のチェックを受けて合格するとお城の中に入る事…
放課後、僕は近くの山に犬のシロを連れて散歩にでかけたんだ。 いつもの散歩コースをいつものようにぶらぶらと歩いていると、山の斜面に穴があるのに気がついた。 「あれ、こんな穴あったかな」 僕は、腰をかがめると穴の中を覗いてみた。 中は暗くてよく見…
一日の終わりにカレンダーめくるのが僕の日課だ。 えいっと勢いよく今日の分をちぎり、くしゃっと丸めてゴミ箱に捨てる。 これでやっと今日が終わり明日を迎えるという気持ちになるんだ。 次の日の朝、目が覚めた僕は何気なくカレンダーに目をやった。 する…
ある日風に吹かれて麦わら帽子が飛んできた。 僕は思わずそれをつかんで、何も考えないでかぶったんだ。 すると、おかしなことが起こった。 僕は男なのに、急に女の子の様な気持ちになって、自分の格好が恥ずかしく思えてきたんだ。 僕は慌ててその帽子を脱…
学校の帰り道、僕は川に大きなスイカが流れているのを見つけた。 「ねえ、スイカが流れてるよ」と僕が言うと、 「取りに行こう」と友達が言った。 だけど、その川は広くて深いから、僕も友達も結局眺めていることしかできなかった。 「あーあ、行っちゃった…
かゆいところをポリポリ掻くと垢が出る。 ポロポロとこぼれ出た垢はすぐに小さな虫へと変化する。 そして、トコトコ歩いて外へ行くと地面に自分たちの巣を作り始めるんだ。 僕は小さい頃、初めて垢虫が自分の腕を這っているのを見た時、とても怖くて思わず泣…
僕の国にはピラミッドがいっぱいある。 あまりにたくさんありすぎて、他の国では大切にされているピラミッドが僕の国では邪魔もの扱いだ。 いくらなんでも邪魔ということはないだろうと思うかもしれないけれど、国の面積の95%がピラミッドだと言ったら、…
王子は突然やって来た。 それは母さんが夕ご飯のシチューを作っている最中だった。 どこからか王子が現れて、「ちょっと失礼」というと取り出したお玉で鍋の中のアクを華麗に取り去ったのだ。 僕と母さんは声も出せずにその様子を見守っていた。 「では、ご…
世間は空前のペットブーム。 母さんは大の犬好きで、我が家も二匹の犬がいる。 だけど、僕は犬が苦手だ。 母さんの愛情の半分以上が犬に注がれていることは確実だ。 だって、僕らの夕食よりも犬のペットフードの方が高級な時があるし、母さんの話すことと言…
久しぶりに高校の同級生のアキ子が遊びにやって来た。 「この部屋は変わんないわねぇ」 「でしょー」 アキ子はキョロキョロと私の部屋を見回している。 「あ、ちょっと、これどうしたの?」 「うん、そろそろ捨てようかと思って」 私はこれまで何度も捨てよ…
今日は彼と初めてのデートだ。 デートコースは俺に任せろと言ってくれたから、どこに行くのかは分からない。 だけど、きっととびきり素敵な場所に連れて行ってくれるに違いない。 なにしろ、今日は初デートなのだから。 「やあ、お待たせ」 家の前に彼の車が…
僕の家の隣に歯医者さんができた。 母さんは大喜びだけど、僕はその理由がよく分からない。 なぜなら母さんの歯並びは決して良くないし、虫歯になっていない歯の方が少ないくらいお口のケアには無頓着だからだ。 「ねえ、さっそく行ってみない?歯医者」 母…
今日は成人式だ。外はまだ真っ暗だけど、そろそろ起きて美容院に行かなくてはならない。 私は分厚いカーディガンを羽織ると、一階に降りて行った。 「あら、ちゃんと起きたのね、えらい、えらい」 母さんは、台所で父さんのお弁当を作っている。 「別に普通…
ある日、朝起きると私の口は、開いたまま閉じなくなっていた。 「おかあはん、ろおしよう。くちはとひはいひょー」 私はキッチンにいる母に向かって必死で訴えた。 「あんた、何言ってんの。朝からふざけてないで、さっさと朝ごはん食べなさい」 母は私のこ…
今日から待ちに待った夏休みだ。 だけど、僕にはゆううつなことが一つだけある。 それは、素麺だ。 僕には双子の妹がいるけれど、妹たちはまだ小さいから、夏休みになると母さんはあまりの忙しさに、いろんなことが面倒になるらしい。 母さんは、あまり料理…
僕の家の裏庭には、大きな木が生えている。 毎年夏になると、この大きな木は蝉だらけになる。蝉の泣き声がとにかくうるさくて、暑くても窓を開けることができない。 ミーンミーン、ジージー、聞くだけで暑さ5割増しだ。 だから、夏は一日中クーラーつけっぱ…
今日は浮き輪レースの日だ。 浮き輪レースは、浮き輪をはめて泳ぐ早さを競うのだ。 僕は、一年間ずっとこの日のために練習を重ねてきた。 レースで泳ぐ距離は1キロだけど、僕は毎日10キロ以上泳いだ。 だから、絶対に負けたくない。 だけど、浮き輪レース…