砂漠運動会
僕の学校は砂漠の中にある。
地面は全部砂だから、普段は体育ができない。だけど、一年に一度だけ運動会が開かれる。僕は運動が好きだから、運動会は楽しみだけど、砂漠で運動会をするのは、とても大変だ。
開会式が終わると、すぐに玉入れが始まった。何しろすごい暑さだから、どんな競技もできるだけ早く終えなくてはならない。
砂漠だから、玉入れの棒は立てられないので、先生が二人がかりで一本の棒を持っている。
「あち!あち!棒が、熱い!!みんな、熱いから、早くしてくれよ!」
「はーい」
砂の上に置いてあった棒は、厳しい日差しにさらされて、火傷するくらいの熱さだ。
「よーい、スタート!」
玉入れが始まった。
最初のうちは、みんなちゃんと玉をつかんでいたのに、途中から、暑さでフラフラになって、落ちた玉がどこにあるのかもわからなくなって、つかんだ砂を投げ始めた。
砂は、玉入れのかごまでは届かなくて、棒を持っている先生にそのままかかったものだから、先生はもう我慢できなくなって、棒を放り出して校舎の中へ逃げて行ってしまった。
「先生待ってよ~」
玉入れをしていた子供たちも校舎へ帰って行ってしまった。
しかたがないから、残りの生徒で綱引きをすることになった。
「よーいドン!」
みんないっせいに綱をつかんでひっぱった。
「よいしょ!よいしょ!」
だけど、みんなの足は砂にどんどん埋まっていく。
「あつ!あつい!あついよー!」
「うわ、抜けない!先生、足が抜けないよー!助けて~!!」
「待ってろよ、今行くからな!」
先生はそう言ったものの、生徒の数が多すぎて、ぜんぜん追い付かない。
「ほら、これで大丈夫だ」
一人を助けるとすぐ次だ。
「先生!こっち、こっち!」
「いや、次は僕だよ!」
「ダメダメ!先生、僕の方が深く埋まってるんだから!」
みんな、容赦なく先生に助けを求める。
「ああ!もう!!」
暑い砂漠で、子供たちの足を引っこ抜いていた先生は、今度は自分が暑くて仕方なくなって、もうこれ以上こんなところにはいられないと、どこかへ行ってしまった。
「先生、待ってよ!僕たちを置いていかないでよー!」
熱い砂の中に置き去りにされた子供たちは次々に泣き始めた。
だけど、そこにさっきいなくなった先生がらくだを連れて現れた。
「さあ、もうこれで大丈夫だ!」
先生はそう言うと、みんなの体にひもをくくりつけた。
「それ!ひっぱれ!」
先生が掛け声をかけると、らくだはそのひもを次々と引っ張った。
「うわぁ!」
「おおっ!」
みんなの体は砂から抜けて、ポンと飛び出した。
ポン!ポン!ポン!ポン!
砂の上に放り出されてみんなは、いっせいに笑い始めた。
先生がらくだのお尻をたたくと、らくだは驚いてどこかへ行ってしまった。
「よし、それじゃあ、次は最終種目リレーだ」
「わーい、リレーだ!絶対勝つぞ!」
みんなは砂に埋まっていたことも忘れて、スタートの位置についた。
「よーい、ドン!」
ピストルの音とともに、みんなはいっせいに走り出した。
砂はあいかわらず熱いし、一歩一歩踏み出すごとに足が砂に沈んでしまうから、ゆっくりなんて走っていられない。
足が砂についた瞬間、飛ぶように足を跳ねさせる。そのせいで、みんなはいつもよりもずっと速く走る。
「おい、みんな飛ばしすぎだぞ!」
先生が言うのも聞かず、みんなは次々とバトンを渡し、そしてゴールを決めると校舎へ向かって一直線。どのチームが優勝したのかなんて、もうわからない。だけど、楽しい砂漠運動会。
僕はもう来年の運動会が楽しみで仕方ないんだ。